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2011.08.16 *Tue

【短編小説】 「大切な時間」 (P-2) / 桂木 けい

【短編小説】 「大切な時間」 (P-1)より~続きます。

 早紀のお腹の中に自分の子供が居るかも知れないという事実を、この時に初めて知ったのだが、まだ父親になると言った実感は無い。だってそうだろう?まさか、こんなタイミングで子供の親になるなんて、思いもしないだろう。

 しかし、これで早紀が私を親に会わせたかった理由が判った気がする。結婚するより先に子供が出来たと判れば、ヘタレで外面ばかり気にする私が逃げてしまうと考えたのだろう、まぁ“当たらずとも遠からず“と言ったところか?。現に昨夜はその事で、彼女のお願いを無下に断ってしまったのだから・・・。

 集中治療室の前で彼女と彼女の子供が無事な事を祈り、点滴ハンガーを引きずりながら病院の廊下を行ったり来たりしていたが、だんだんと身体中が痛くなってきた。それでも自分の病室に帰る気にはならず、廊下のソファーに座り込んで寝てしまった。

 しばらくしてから看護婦さんに起こされて目を覚ますのだが、ようやく早紀が回復して一般の病室へと移される時だった。彼女の顔をそっと見てみたが、まだ眠ったままだったので、後から出てきた医師に本当に大丈夫だったのか尋ねてみたが、もう大丈夫との事で少しホッとしたした事を今でも覚えている。

 その後に彼女は妻となり、女の子を無事に出産した。子供の名前は二人で考えて、両方の母親の名前から1文字ずつ取って“美鈴”(みすず)という名をつけた。

 最初は早紀への贖罪のような気持ちでスタートした彼女との結婚生活だったが、付き合いが長いという事もあり、お互いの事を良く知った上での結婚だったのが幸いしてか、その後は穏やかな毎日が続いている。

 美鈴の夜泣きには少々悩まされたが、産まれて半年もすれば首がすわり膝に”抱っこ“する事も出来た。1歳になる頃にはヨチヨチと歩き出したのを見て、妻と2人で抱き合って喜んだモノだ。2歳から3歳になると、もうカタコトを話し出したのを聞いて、その成長の早さに驚かされた。

 この頃になって、ようやく父親としての感覚が養われてくるのだが、お腹を痛めた母親と違って、男親の場合は親になる為の時間が必要になるらしい。

 結婚する以前には倦怠期も経験し、もしあのまま別れていたら今の“この時間”は存在していないだろう。そう思えば“あの事故”も、私たち夫婦に取っては“乗り越えるべき何か”の一つだったのかも知れない。今は美鈴を産んでくれた妻への感謝もあり、彼女たちへの愛情を感じる事が出来る自分が居る。もしかすると幸福感というのは、こんな感じの毎日を過ごす事への感謝の気持ちの事なのかも知れない。

 その生活の中で“父親”として関わっていく自分が居るが、これは子供の頃から“ずっと口に出せず”に思い描いていた家族の風景だった。それは父と母が仲良く子供と一緒に暮らしている普通の光景だが、私が子供の頃には願っても手に入らなかった家庭生活を現している。

 父親として少しの戸惑いを持ちながら“チョット恥ずかしい”ような感じの幸福感。このささやかな時間がすっと続くように思っていた。

 今日は早紀と結婚してから10回目の結婚記念日になる。結婚した年に産まれた美鈴も9歳となり、もう小学の3年生になっている。最近では仕事から戻って来ると、妻より先に玄関で出迎えて“ただいまのギュッ”くれるのだが、服を脱ぎ捨てると“妻より先に”注意される様にもなっていて、この先が思いやられる今日この頃だったりする。

 玄関から廊下を歩いて早紀が居るハズのキッチンへと向かう。もう夕食の用意は、ほとんど終わっていて鍋からは湯気が出ており、食器を並べていた途中のようだったが彼女の姿は無い。もしかすると何か足らない物があって近所のスーパーへ買い物にでも行ったのだろう。

 一度部屋へと行って手に持った荷物と上着を脱いでからキッチンへと戻ると、もうお姉さんになった美鈴が残りの食器を並べていた。お茶碗にコップにお箸、それにお皿が出揃うと後はお母さんが帰って来るのを待つだけになる。

 美鈴がテーブルの正面の椅子に座ると、私も椅子を引いて腰掛ける事にした。

「お母さん遅いね?まだなのかな?」

「お父さん、今までありがとう」

 娘の手には小さな包みがあり、結婚記念日に妻の早紀が美鈴に手渡していたと見られるプレゼントがあった。私も妻へのプレゼントを用意していたが、それはまだ先ほどの手荷物の中なので、後で妻が戻って来てから取りに行こう。

「あたし、お母さんを呼びに行かないと・・・」

「もう、お外は暗いから一緒に待っていようよ?」

「だめよ、お母さんきっと待ってるから・・・」


「なら、お父さんと一緒に行こうか?」

「お父さんはココに居て」

 とりあえず美鈴の言う事を聞いてみるが、いくら近所のスーパーまでとは云え、この子が言う通り一人で行かせても大丈夫なのだろうか?。気がつくと美鈴がもう椅子から離れていて、廊下からこちらを向いて“行ってきます”のバイバイをしている。

「美鈴、ちょっと待ちなさい!」

 今日は子供の塾の日だったのか?何を急いでいるのかすら飲み込めない状況なのだが、父親としてはカンタンに取乱す事は出来ない。

「たくさん大切にして貰ったから、もう行かなくちゃ・・・」

「だから何の事を言っているんだ?!」

「お母さんを大事にしてね」

 私と言う人間は、こうも飲み込みが悪かったのかと“いまさら”ながらに思う。もしかすると、娘が何を言っているのか判ってはいたが、それを恐れていた私自身が最後まで認めようとしなかっただけなのかも知れない。

泣き笑いを浮かべて手を振っていた美鈴が消えた。するとキッチンも廊下も消えて、テーブルや椅子など全てのモノが消えてしまい、真っ暗な中に一人だけ取り残されてしまった。

 気がつくと病院の廊下に戻っていて、集中治療室の前にあるソファに座り込んで眠っていたようだ。すると、ちょうどその時に正面の扉が開いて、ベッドの上に寝かされたままの早紀が出てきた。

 一般病棟へと移された早紀の後について来てから、病室の椅子にもたれかかって彼女の寝顔を眺めていた。彼女の事は大切に思っていたので結婚を考えた事もあったが、ずっと一緒に暮らしていく自信のようなモノが欠けていたので、今まで答えを出せずにいた。また、“愛情”と云うモノの正体についても判らないというのが正直な気持ちだった。

 彼女を“抱きたい”という性的な欲求や、他人に“渡したくない”気持ちはあるが、これが=“愛情”とは素直に感じられない事もあり、お互いに年齢を重ねた後も、この気持ちが続くのかは分からない。また、仲が悪くなった夫婦の居る家庭で育てられる子供の気持ちはミジメなモノで、そんな家庭なら要らないかな?何故かは分からないが、そういう結論になってしまうのだった。

(このまま目を覚まさないのでは・・・?!)

 血を拭いた跡の残る頬を見ていて“フト”そんな気がして急に不安が募ってきた。一時的に容態が悪かったのだが今は何とか回復していて、後は安静にしていれば大丈夫と医師の説明は受けていたが、もしも彼女を“失ってしまったら“と考えてしまい、落ち着いている事が出来ずにいる。

 これもその時に説明を受けていたが、お腹の子供はダメだったらしい。まだ妊娠初期の頃で外見からでは判らなかったのだが、小さな命が消えてしまったと言う事だった。昨夜の事故さえ無ければ、私と一緒に毎日暮らせるハズだった。私はその子を知っていた。何故か?顔を思い出す事は出来ないでいたが、良く笑うとてもカワイイ女の子で、早紀と私とその子の3人で過ごす“大切な時間”が、もう戻って来ない事を考ると思考が途切れて、目の前が滲んで見えなくなる。

 少ししてから早紀が目を覚ました。まだ自身に何が起こったのか理解が出来ないような、そんな表情の彼女だったが、目から目頭に向かって“一筋の透明な線”を見つけた。私がここに座っているのに気がついたのか?先が首をコチラに向けて、小さな声で何かを言った。

「この子が私を呼びに来たの、女の子だったわ」

 ここで彼女の声が途切れてしまい、この後は深い嗚咽のような声に変わるが、まだ続いた。

「私の代わりに行くって、確かにそう聞いたのよ」

「信じるよ、本当に・・・そう信じる・・・」

 今の私には、彼女の言う事が分かる。彼女も自身が出会った相手が誰なのか理解しているようで、その気持ちをどう表現して私に伝えれば良いのか戸惑っているようだ。もし彼女ともう一度やり直せるのなら、私は何を代償としても支払う覚悟が出来ていた。彼女と一緒にこの病院を出て、もう一度一緒に暮らして、落ち着いた頃にもう一度あの子の事を話そう。美鈴の事を・・・。



【あとがき】

 このお話は当初は「ネットの彼女」の中で、最後の方に主人公が経験するお話の一つとして考えていた100%フィクションです。たまたまなのですが、PCの中を整理していたら、去年に書いたプロットを見つけて“ホンの少しだけ”脚色をしてから、このお盆の連休用にUPしたものです。モンハンブログとは何も関係が無くなってしまいましたから“雑文”のカテゴリに入れてありますが、将来的には“短編小説”だけのカテゴリがあってもイイですよね~?。こっちに出てきた“美鈴ちゃん”ですが、名前だけでも「ネットの彼女」に出演して貰おうかなぁ~w?。
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COMMENT

これはこれで面白いんで続けてみては?

なんて無責任な事を言ってみるw
2011/08/16(火) 23:37:07 | URL | AL #- [Edit
ALさんへ!
またまた読んで頂けたみたいですにゃw。

短編小説のネタはまだありますので、
ブログのUPに穴が空きそうな時の為に、
また書いておきますにゃ!。
2011/08/17(水) 10:30:04 | URL | kei #YG9ONXHE [Edit

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